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#112 12月の花火

           りさ
             (厨房のイメージ図)
12月

ユーは依然としてミスが多く続く中で、
クリスマスのピーク時に、時間をかけて仕込んだ肉の皿を地面に落としてしまい、
「厨房から出て行きなさい」と、あの優しいシェフが声を荒げた。
いままで溜まっていたものが爆発したのだと思う。
そして、「皿(商品)に触らないで」とも言われた。

この事件があってからというもの、先輩の暴力ははっきりと激化し、
それは力一杯、痛めつけるのを目的としているような苛烈なものになった。

何度か止めたが、それ以上にミスの数が多く、僕の見てないところではかばいきれない。
ユーは、すでに尋常なメンタリティではなくなり、仕事が手につかなくなった。

先輩にみられながら皿に盛りつけるとき、
指がふるえ、声を絞り出すようにふるわせて、「これでいいですか」っていう男が、
僕の知ってるユーだとはとても信じられない。

そして、ドルチェの仕込みは僕やシェフがやり、ユーは計量だけになった。
ドルチェメニューもかなり簡単なものだけになり、
突き出しも、お皿にのせるだけといった簡単なものになったり、僕がやったりしている。
ドルチェもオーダーが来たらシェフがわざわざやりにいく。

早い話、ものを運んだり、本当に簡単な事しかやらせてもらえていない。
そしてそれすらもうまくできなかったり、遅かったりする。

もう仕事をできるメンタリティではなかった。
この頃にはただ暴力と失敗におびえて、普通のことも普通にできなくなっていた。

エスカレートする暴力。少しずつおかしくなるパートナー。


僕:「おい、もう許せねえんだけど、タオル投げてもいいか?」

ユー:「俺ができてないのが悪いんだ。まだやらせてくれ。」

僕:「・・・そうか。・・・わかったよ。」


自分の仕事がうまくやれるようになれば、全て解決すると信じて、
大切な家や仕事を手放したくないから、今は我慢するしか無いと
ユーはそう思っていた。

目の前でパートナーが殴られているのを見るのは許せるものではなかったけど
本人が必死に努力しているのを無にしたくはなくて、僕は見守るしか無かった。

         りさ1

12月28日。

営業が始まる直前、シェフが僕ら全員を集めて、お客を待たせながら話をした。

「ユーは問題。まったく学習しないですぐに忘れる。料理人の基礎もない。
 ユーのためには、日本へ帰って料理学校へ行った方がいいと私は思う。
 いや、そうすべきだわ。ここにいても勉強になるような事はやらせられないもの。」


そうはっきりと宣言されてしまった。
それは、もうほとんどクビだという事も意味していた。

この状況が続けばそう遠くないうちに。。。
そうは思っていたけど、早かった。

ただ、ユーは毎日、ミスの反省をノートに書いたり、努力はしているわけで
あんなにやって、なんでそんな基本アイテムの名前知らなかったの?と、
思うところだけど、ユーはもうストレス障害のようになっていて、
頭にはまったく入っていかなかった。


そうして僕はその夜、くやしいけど先輩に頭を下げた。
「ユーをかばってやってもらえませんか」
これがベストな方法じゃない事は、わかってたんだけど、
少しでも時間を稼ぐ事しかもう僕にできる事はなかった。

りさ2 シェフはその日の最後に、
 「明日は休みだから、ゆっくり考えなさい」とユーに言った。
 もちろん店を辞めるかどうかをだ。

 その次の日は休みだった。。
 朝からずっと店の復習をしているユー。
 もしかしたら、休み明けにクビを宣告されるかもしれない。

 せっかく安住の地を見つけ、勉強にもなるし、生活の不安もない。
 クビになれば、つらいイタリア生活に心がおれるかもしれない。

 日本のみんなは理解できないかもしれないけど、
         もう逃げ出したいような気持ちで僕たちは戦っていた。


1人は、ダメすぎる自分にあきれながら、それでもやる気を振り絞って、
もう1人は、自分はどうすることもできなくて、それがはがゆくて。


休み明けに、もっとここにいさせてほしいと懇願するユーにシェフは、
一ヶ月様子を見ようと伝えた。


そして2009年、大晦日。

つらい1年の終わりを外の花火が告げていた。
僕らの重い気持ちとはうらはらに、街は新年の盛り上がりを見せていた。

実は、むちゃくちゃなことになっていた。


人気ブログランキングへ いままで語られなかった若毛のイタリや。
 もう少し続きます。
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コメント

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No title

まじろさん、お久しぶりです。

いま、お二人は笑ってるのでしょうか??

それを祈って。。。。

No title

歯を食いしばってでも笑いますよ(^_-)

コメントしずらい記事に、
いっつもありがとうございます。

まだまだここから!

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あっはっは!

majiro

Author:majiro

企画マン まじろー
(写真:右)
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2009/2
 サラリーマン卒業!
2009/5
 フィレンツェでコック修行!
2009/9
 プーリアでコック修行!
2010/4
 ヨーロッパ旅行
 『世界の緑から』へ出発!
2010/5
  帰国。(東京→三重へ)

デザイナー  ユー
(写真:左)


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